除菌・抗菌・殺菌・滅菌・消毒の違い-手洗い・掃除でどれを選ぶべき?
除菌・抗菌・殺菌・滅菌・消毒の違いを分かりやすく解説!
「除菌と抗菌ってどう違うの?」
「違いが分からないからお掃除グッズを買う時に困る・・・」
除菌グッズや抗菌グッズっていろいろな商品が販売されていますが、定義や効果の違いがよく分かりませんよね。
除菌と抗菌以外にも、殺菌、滅菌、消毒など、違いのよく分からない言葉がたくさんあります。
私は新型コロナウィルスの感染が広がってから「除菌グッズを買おう」とおすすめ商品を調べていた時
「何がどう違うのか分からない」・・・という底なし沼にはまりました(笑)。
そこで、この記事では私と同じような疑問をお持ちの方のために除菌・抗菌・殺菌・滅菌・消毒の違いを説明します!
また、手洗いや掃除をする時「除菌グッズや抗菌グッズをどう使い分けるか」も解説!
記事をお読みいただければ、除菌グッズや抗菌グッズの意味・効果の違いが分かり、手洗いやお掃除をする時どれを使えばいいかも分かります。
これからのウィルス対策にぜひお役立てください!
除菌・抗菌・殺菌・滅菌・消毒の違い比較表
除菌・抗菌・殺菌・滅菌・消毒の違いは表の通りです。
「菌を減らす(増やさない)」のが抗菌・除菌、「菌を殺す」のが殺菌・消毒・滅菌と大きく分けられますが、効果や定義には差があります。
そのため、表では「菌やウィルスを殺す効果」の大きい抗菌<除菌<殺菌(消毒)<滅菌の順に並べました。
分類 | 定義 |
抗菌 | 菌の繁殖を抑える |
除菌 | 菌を減らす |
殺菌 | 菌を殺す |
消毒 | 菌を害のない状態にする |
滅菌 | 菌を全滅させる |
ザックリとした違いが分かったところで、次はそれぞれの定義や詳しい効果について解説します。
手洗いや掃除の時はどう使い分ければいい?
抗菌・除菌・殺菌・滅菌・消毒の効果には、具体的にどんな違いがあるのでしょうか?
また、手洗いやお掃除をする時は、抗菌グッズ・除菌グッズなど、どれを選べばいいのでしょうか?
続いては、以上の2点について見ていきましょう。
抗菌:菌が繁殖しやすい場所・モノに
抗菌とは、菌の繁殖を抑制・阻害すること。
菌を減らす(殺す)わけではなく、「菌の数を増やさない」ということです。
そのため、菌が繁殖しやすい場所やモノに抗菌加工が施され、抗菌グッズとして販売されていたり、抗菌効果のあるスプレーも販売されています。
とはいえ、例えば歯ブラシが抗菌仕様だった場合、菌の数が増えにくいだけで菌がいないわけではありません。
つまり、「抗菌グッズだからずっと使い続けても清潔」というわけではないのです。
なお、抗菌は基本的に手洗いとは関係ありません。
■抗菌グッズの例
キッチン用品(ふきん・まな板など)、靴下、歯ブラシ、便器、スプレーなどがあります。
掃除の手間を減らすために抗菌加工済みの便器を使ったり、菌の繁殖を抑える目的でモノに抗菌スプレーを吹きかける使い方が一般的です。
■抗菌グッズの注意点
経済産業省が定めるガイドラインによると、抗菌グッズの定義は「抗菌加工した当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」です。
ただし、ここで言う細菌には、カビ、ぬめり、黒ずみは含まれません。
また、JIS(日本工業規格)によると、「抗菌加工製品表面の細菌が通常製品の1/100以下」の場合に抗菌効果があると規定しています。
■表記に関する注意点
業界団体の調査で「抗菌効果あり」とされた繊維製品(靴下など)には「SEK」マーク、繊維製品以外(まな板など)には「SIAA」マークが付いています。
参考サイト:抗菌加工製品ガイドラインのフォローアップ結果について(METI/経済産業省)(参照 2020-06-08)
参考サイト:抗菌とは│SIAA(抗菌製品技術協議会)は、抗菌/防カビに関するマークを認証している業界団体です。(参照 2020-06-08)
除菌:殺菌・消毒用品の代用に
除菌とは、菌を減らす効果を指します。
ただし、どの程度まで菌を減らすかについてハッキリとした基準がありません。
極端に言うとティッシュでモノを拭き取り、1%でも菌を減らせられれば「除菌」と言えるのです。
そのため、効果のハッキリしない除菌グッズが販売されることがある一方、「菌を殺す効果」があっても除菌を謳っている商品もあります。
除菌グッズを選ぶ時はアルコール濃度(消毒用には約70~80%が推奨)を調べるなど、効果の根拠をしっかり確認しましょう。
※業界団体が独自基準を設けて効果の根拠を表示している除菌グッズもあります。
以上の点を考えると、お掃除の時は除菌グッズ(効果の根拠が明確な商品)を「殺菌・消毒の目的で使う」方法がおすすめです。
■除菌グッズの例
スプレー、洗剤、ウェットティッシュ、ハンドジェルなどがあります。
スプレーや洗剤、ウェットティッシュはモノの除菌に使えますし、ハンドジェルは手指の洗浄に使えます。
商品の用途や特性を確認したうえで使ってください。
※除菌グッズについて詳しく知りたい方はこちらへ。
■除菌グッズの注意点
除菌グッズの性能に関するテストは、性質の違う代表的な菌だけを対象に行われます。
例えば、洗剤や石鹸に関しては日本洗剤工業会が「大腸菌と黄色ブドウ球菌を1/100以下に減少させる能力を持つ製品のみ除菌を謳える」と定義しています。
そのため、全ての菌を減らせるわけではなく、カビや酵母などの真菌類は対象外です。
■表記に関する注意点
「除菌」という表記がある商品は、基本的にスプレーや洗剤など「雑貨」として扱われる商品です。
というのも、いくら菌を殺す効果があっても、「殺菌」や「消毒」という表示が許されるのは医薬品(治療を目的とする)・医薬部外品(予防や清潔を目的とする)に限定されるから。
医薬品・医薬部外品として認められない商品(雑貨)で、菌を減らす効果が期待できる場合に「除菌」と表記されます。
参考サイト:公正取引協議会関連(参照 2020-06-08)
参考サイト:日本石鹸洗剤工業会 石けん洗剤知識(参照 2020-06-08)
殺菌:石鹸やハンドソープでの手洗いに
殺菌とは、菌やウィルスを殺す(死滅させる)ことと定義されています。
「どの程度まで菌を殺せば殺菌と言えるか」についてハッキリした定義はありませんが、後ほど説明するように「殺菌」を謳うには厚生労働省の承認が必要です。
公的機関の承認を受けている点を考えると、殺菌グッズは効果を持つと考えて間違いないでしょう。
■殺菌グッズの例
ハンドソープ、洗顔料、ハミガキ粉、スプレーなどがあります。
手指の消毒やモノの消毒など、商品の用途によって使い分けてください。
■表記に関する注意点
「殺菌」という表記は医薬品か医薬部外品にしか認められません。
医薬品も医薬部外品も製造・販売には厚生労働省の承認が必要なので、除菌グッズと違って効果の根拠がハッキリしています。
「殺菌」という表記がなくとも、ハンドソープなど医薬部外品に「薬用」という表示があれば厳しい基準をクリアしていると考えてください。
参考サイト:日本石鹸洗剤工業会 石けん洗剤知識(参照 2020-06-08)
消毒:手洗い・掃除全般に
消毒とは、人体に有害な物質を無毒化する(害のない状態にする)ことです。
医療現場では、「対象物に付着している病原菌のある微生物を、害のない程度まで減らすこと」と定義されています。
消毒は殺菌と意味が近いものの、必ずしも菌を殺す必要はなく、感染力をなくしたり病原体の危険性を取り除くことができれば「消毒」とされます。
■消毒グッズの例
消毒用エタノール、手指消毒液など(アルコール配合の商品が多い)などがあります。
直接手や指に付けて洗浄したり、モノの拭き取りに使ったりと、幅広い用途で使えます。
■表記に関する注意点
医薬品や医薬部外品にしか「消毒」という表記は使えません。
厚生労働省の承認を受けた商品しか消毒効果を謳えないため、除菌グッズより効果の根拠が明確です。
参考サイト:消毒・滅菌の概要(PDF) |日本医師会(参照 2020-06-08)
滅菌:医療現場の滅菌製品に(手洗いや掃除と無関係)
滅菌とは、すべての菌・ウィルスを死滅させる(除去する)という意味です。
また、日本薬局方(医薬品の規格基準)によると、「微生物の生存する確率が1/100万になること」と定義されています。
とはいえ、人体でそこまで微生物が減ることは現実的に起こりません。
つまり、滅菌は医療器具などに付着した菌に対して使われる用語です。
■滅菌グッズの例
ばんそうこう、滅菌ガーゼ、滅菌精製水(細菌や不純物を取り除いた水)などがあります。
医療現場で使われることが一般的で、お掃除にはあまり関係ありません。
■表記に関する注意点
「滅菌〇〇」として販売されている商品は、「滅菌されたモノ」のことを指し、モノ自体が菌を殺したり減らしたりするわけではありません。
例えば、ばんそうこうやガーゼのパッケージに「滅菌」という表記があっても、パッケージ内に微生物がいないだけで、ばんそうこうやガーゼが菌を殺すわけではないのです。
参考サイト:Y’s Square:病院感染、院内感染対策学術情報 | 1 滅菌・消毒とは(参照 2020-06-08)
抗菌・除菌・殺菌・消毒どれを使うのが正解?
ここまでの説明で「滅菌」はご家庭での手洗いやお掃除にはあまり関係ないことがお分かりいただけたでしょうか。
でも、「抗菌・除菌・殺菌・消毒の使い分けがいまいち分からない」と思いませんか?
ハッキリした正解はありませんが、もし迷った時は次の3点を基準にすると失敗がないはずです。
- 菌が繁殖しやすい場所には抗菌スプレーが有効(「抗菌」と表記があっても掃除は必要 ※菌が増えにくいだけでゼロではない)
- 効果に関する基準や根拠がハッキリしない除菌グッズの使用は控える
- お掃除グッズにはなるべく「消毒」「殺菌」と表記のある商品を選ぶ(手指の消毒なら「薬用」でもOK)
ここまでは除菌や抗菌など言葉の定義、具体的な用途について解説しました。
続いては、除菌や抗菌の対象となる「細菌やウィルスの違い」を説明します!
細菌とウィルスはどう違うの?
細菌とウィルスの違いは次の通りです。
細菌
- 目に見えない微生物
- 1つの細胞しかない
- 有害な細菌(大腸菌、黄色ブドウ球菌など)と有用な細菌(納豆菌など)がいる
- 人体には多くの細菌がおり皮膚や腸内を守っている
- 基本的に抗菌薬(抗生物質や抗生剤)で死ぬ
ウィルス
- 大きさは細菌の約1/50
- 自分で細胞を持たない
- ヒトの細胞に入り込んで増殖する
- 抗菌薬は効かない
- 抗ウィルス薬はあまり開発されていない
両者のうち、ウィルスは「エンベローブウィルス」と「ノンエンベローブウィルス」の2種類があり、有効な消毒方法が異なります。
知らないと危険!アルコール消毒3つの注意点-安全で効果的な除菌方法とはで詳しく解説していますので、気になる方はぜひご覧ください。
まとめ
抗菌・除菌・殺菌・消毒・滅菌の違いを簡単にまとめると、次のようになります。
■抗菌
- 菌の繁殖を防ぐこと
- 抗菌加工済みのキッチン用品や歯ブラシなどがある
- 抗菌グッズは菌が増えにくいだけでゼロではない(掃除が必要)
■除菌
- 菌の数を減らすこと(程度は決まっていない)
- 雑貨で菌を減らす効果が期待できる商品に「除菌」という表示がある
- 効果の根拠がハッキリしない除菌グッズの使用は避けた方が良い
■殺菌
- 菌を殺すこと(程度は決まっていない)
- 医薬品か医薬部外品だけに「殺菌」という表示が認められる
- 除菌グッズより効果の根拠が明確
■消毒
- 菌を無毒化すること(害のない状態にすること)
- 医薬品か医薬部外品だけに「消毒」という表示が認められる
- 除菌グッズより効果の根拠が明確
■滅菌
- 菌やウィルスを全滅させる
- 基本的には医療器具などに付いた菌に対して使われる言葉
- 滅菌済みの商品には菌がいないだけ、商品自体に菌を殺す効果はない
それぞれの違いをよく理解して、日ごろのウィルス対策やお掃除にお役立てください!